贈与とは限らない(1)

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預貯金の名義変更や他人名義の預貯金は贈与?…相続税課税は不可!」



贈与とは限らない(1)

預貯金の名義を変更すると??


税務では…不動産や株式等の名義変更について、『相続税法基本通達9-9』によって、以下のように定められています。
‥‥不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。‥‥
《不動産、株式等》は、名義変更をしただけでも、〈贈与である〉と推定されるわけですね。では、「預貯金」の場合は、どうなるのでしょう。「預貯金」は、《不動産、株式等》に含まれません。

贈与?!


夫名義の預金1億円を、妻に『名義変更』したら…銀行には、『名義変更』の事実を税務署に通知する義務が、ありません。では、夫が預金から1億円を引き出して、妻名義の口座を1億円で作ったら…銀行は、預金口座ができる都度、税務署に通知などできません。そんなことしたら税務署の事務も銀行の事務もパンクします。
このように税務署は、「預貯金」については、『名義変更』の事実を把握していません。〈預貯金の名義変更は贈与である〉としたら…「贈与税」の課税をしたいところですが、不可能なのです。

贈与では課税不可!


さて…預金1億円を妻に『名義変更』した夫が、10年後に死亡しました。「相続税」の税務調査があり、《妻名義》の預金が、問題にされます。
そして、次のような戦いが‥‥
税務署…口座は《妻名義》でも預金は夫のもの。実質的に相続財産として「相続税」の課税対象だ!!
妻…《預貯金の名義変更》は『贈与』だから、預金は10年前から私のもの。「相続税」ではなく「贈与税」でしょっ?!
税務署…『贈与』って言うけど、10年前、「贈与税」の申告してないでしょ?!
妻…申告漏れは、認めます。ごめんなさい。でも、10年前だと、「贈与税」は時効よね〜!!
税務署…左様でございます(…負けた。)‥‥

相続税でいこう!!


〈預貯金の『名義変更』は贈与である〉‥と決めつけて、贈与として取り扱えば、困るのは税務署なのです。ですから、名義変更や他人名義預金があっただけでは、「贈与税」の課税対象にはしないのです。税金を取れませんから…。
そこで税務署は、次のように言い換えます。
‥‥10年前の名義変更は、贈与ではなく、妻の名義を借りただけ。印鑑は夫のものだし、通帳管理も夫がしていたのだから、実質は夫のもの。よって、「相続税」の課税対象である。‥‥

痛恨の申告漏れ?!


このように言われても、妻は《10年前贈与!》‥と、主張することはできます。ただし、本当に『贈与』であったことを、説明する必要があります。《名義変更以外》の、何らかの形で…。
しかし、〈「贈与税」は申告していない・印鑑は夫と同じ・通帳を管理していたのは夫〉‥となると、説得力に欠けますね。

贈与と言いたい時もある!


逆の場合もあります。『名義変更』が10年前ではなく2年前であれば、「贈与税」は有効です。時効になっていないので、税務署は、「贈与税」だといってくるかもしれません。
2年前の『名義変更』を発見した税務署は…〈名義変更は贈与になるので、贈与税の課税対象である〉‥と、主張します。
そして、2年前に『名義変更』をした人は…〈単に名義を借りただけで、実質は変更していない〉‥などと、説明することになります。

真の所有者は誰?


〈名義を借りただけ〉の預金口座は、《名義預金》と言われています。この「名義預金」は、「相続税」の税務調査で、絶えず問題になっています。
そこで、「預貯金」については…名義にかかわらず、〈実質的に管理しているのは誰か・もともとは誰の資金か〉‥などの諸事実に基づいて、真実の所有者が判定されるのです。

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